そして、今大会は特に注目選手はこの2人!
奥川恭伸・佐々木朗希
この2人の評価は全く違う形となった。
間違いなく有望株No.1の奥川恭伸!
カナダ戦で7回1失点18Kと快投し大会ベストナインに選ばれた奥川
8日まで韓国・機帳で行われていた「第29回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」。初の世界一を目指した野球日本代表「侍ジャパン」U-18高校代表は決勝進出、そして3位決定戦進出も逃して5位に終わった。頂点に立ったのは台湾で、9年ぶり3度目の優勝を飾った。
【動画】7回を投げアウト21個のうち奪三振は驚異の「18」 圧巻の投球を見せた奥川恭伸が奪った全三振の映像
オープニングラウンドでは優勝した台湾に、そしてスーパーラウンドで宿敵の韓国、そしてオーストラリアに敗れて悔しさを味わった高校代表。5位に終わる結果となったが、奥川恭伸投手(星稜)と韮沢雄也内野手(花咲徳栄)はベストナインに選出された。
スーパーラウンド初戦のカナダ戦で先発し、7回を2安打1失点、驚愕の18三振を奪った奥川には海外メディアも大きく注目。米データ専門サイト「ファングラフス」では「WBSC U-18ワールドカップ特集:右腕ヤスノブ・オクガワ」と題した記事を掲載。米スポーツ専門メディア「ジ・アスレチック」などに寄稿する韓国人コラムニストのキム・スンミン氏が執筆し「この大会で1番のプロスペクトを選ばなければならないなら、間違いなくオクガワである。彼はカナダ戦で素晴らしかった」と記した。
カナダ戦で奥川は21個のアウトのうち、18個を三振で奪う圧巻の投球を見せた。この試合を目の当たりにしたキム・スンミン氏は「この登板で、オクガワは90-91マイルの直球を投げていた。もっと速い球が投げられるが、長いイニングを投げるために、体力を温存していた。彼の直球にはキレがあり、球速以上に速く見える。高めに投げれば、空振りを奪う。低めに投げれば、見逃しとなる」と、奥川のストレートを高く評価している。
さらに、同氏は「しかし、彼の決め球は77~79マイルのスライダーである。この他、オクガワは71~73マイルのスローカーブを投げた。78~79マイルのスプリットも投げ、打者の目線を変えていた」とレポートし「オクガワをデンジャラスな投手にさせているのは制球力である。試合を通して、彼はストライクゾーン全体に投げ、打者のバランスを崩していた」と、奥川の最大の武器であるコントロールを絶賛していた。
記事では奥川がNPB入りする可能性が高いことにも言及した上で「これほど若くて、このような制球力と球を持っている投手は珍しい。オクガワが大きな怪我をせずに成長したら、最盛期にエキサイティングなメジャーリーガーになるポテンシャルがある」とレポート。将来的にはMLBで活躍できるだけのポテンシャルを秘めていると伝えていた。
プロ注目の163キロ右腕、佐々木朗希(大船渡高)のドラフト1位指名からの撤退を検討している球団が続出していることが11日、明らかになった。佐々木は、右手中指にできたマメの影響があり韓国で開催されていたU-18W杯で1試合、1イニングしか登板できず、チームも5位で帰国した。佐々木の最終チェックを満足のいく形でできなかったため、そのポテンシャルの大きさを把握しきれず、入団後の育成法を考えて指名を躊躇している球団が出始めているのが現状のようだ。日本の球団では手に負えないほどのスケールの怪物。それが佐々木なのかもしれない。
スカウトが注目していた“高校侍ジャパン”の佐々木は、たった2イニングしか投げなかった。右手中指にできていたマメが潰れたため、8月26日に神宮で行われた大学日本代表との壮行試合は12球、そして9月6日のU-18W杯の韓国戦でも19球でマウンドを降りた。
全力投球ではなかったが、ヒットは1本も許さず150キロ台前半のストレートは惚れ惚れとするものだった。それでも「投げられなかった佐々木」に対してファイナルアンサーに迷う球団が続出した。
何人かの球団関係者の声を拾ってみたが、意外にも聞こえてきた本音は、「悩む」「迷う」といった声だ。
「何が何でも1位」と公式アナウンスしている球団は日ハムだけ。日ハムは、吉村GMが6月の段階で「間違いなく1位で指名する」と公表。その後も日ハムのスカウト陣は、「(1位指名の)評価は変わらない」と語っているが、複数の他球団からは、1位指名撤退の動きがうかがえるのだ。
なぜか?
理由の一つが育成への不安だ。
ある球団の編成幹部が、こんな本音を語ってくれた。
「佐々木は即戦力だとは思いますが、やはり下半身も含めて体ができていない。では、取った時に、これまでの新人と同じような形での育成でいいのか?という疑問があります。過去に160キロを超えるボールを投げる能力の投手を育てたことのあるチームは大谷翔平がいた日ハムしかありません。160キロを超えると、人間の肩や肘にどれだけの影響を与えるのか。そのためのケアや故障防止はどうすればいいのか。ノウハウを持っている球団はないのです。メジャーにはあるのかもしれませんが、それでもダルビッシュや大谷など、トミー・ジョン手術をする投手が続出しています。医学的な知識を持った人間も交えて、まったく新しいプロジェクトを組み、スタッフと特別育成カリキュラムを用意して、佐々木を迎える必要があるのです。じゃあ、そういうプロジェクトをしっかりと作れるのか、という問題が出てきますよね。そう考えると“佐々木より他の選択肢がいい”となる。本当に悩みます。これは、どの球団も同じ状況でしょう」
プロ野球史に残るような“怪物”を手に入れたはいいが、ひとつ育成法に失敗すれば、そのせっかくの逸材を眠らせたまま終わりにしてしまう危険性がある。故障でもさせれば一大事だし、そうなれば、球団に対して「岩手県大会決勝登板を回避してまで将来にかけたのに何をしてるんだ?」とファンの批判が殺到、チームの編成計画も狂うだろう。
しかも、前出の某幹部が語った通り、160キロを投げるポテンシャルを持った投手の育成カリキュラムを持っている球団など、どこにもない。故障の不安もつきまとう。佐々木の1位指名には大きなリスクを伴うのだ。
佐々木が、日の丸のユニホームを着て計2イニングしか登板できなかった問題は、それらの不安にさらあおることになった。スカウトは一様に「育成にかなりの時間がかかる」と判断せざるを得なかったのである。
東北の地元スターを1位指名する可能性の高い楽天の石井一久GMでさえ、神宮での壮行試合を観戦した後、「日本の宝」と大絶賛しながらも、特別育成プランが必要であることをほのめかしていた。
「即戦力に近い未完の大器だと思う。でも体は高校生だから、すぐに140何試合を戦うプロの世界で投げる体力があるかわからない。佐々木君を指名したら場数を踏ませるプランを作らないといけない。でもファームで使えば成長するというものではない。日ハムのように定期的に上(1軍)に上げた方が早く育つんですけどね」
石井GMが参考に挙げたのは、日ハムがドラフト1位指名した金足農の吉田輝星をキャンプでは2軍スタートさせたものの、6月以降タイミングを見ながら1軍で起用している育成法だ。日ハムは大谷翔平の“二刀流”をも成功させた体験を持つ。
楽天も田中将大という高卒ルーキーを大成功させたが、マー君は、佐々木に比べて体ができていた。一方で、肘に不安を抱えて入団した安樂智大を今なお開花させられていないなど、高卒ルーキーの育成法について確固たるノウハウを見つけ出せてはいない。
日ハム、そして長期型育成に備えた3軍を持つソフトバンク以外の球団のほとんどが、佐々木クラスの怪物の育成経験がない。阪神に至っては、ルーキーイヤーから3年連続2桁勝利をマークした藤浪晋太郎をこの3年間、スランプから脱出させられないままだ。
ドラフト1位を誰にするかは、来年以降のチーム戦力を整えるための重要な球団戦略である。「未完の大器」の佐々木には「入団後の育成プラン」という戦力にするための条件がついてくるのであれば、指名を躊躇してしまう球団が出てくるのも仕方がないだろう。
それよりも育成プランにメドが立つ他の1位指名候補を選択する方が、企業としてのリスクは少ない。星稜高の奥川恭伸や明治大の森下暢仁などの超A級候補もいるのだ。
元ヤクルトの名スカウト、片岡宏雄氏も、「オレがスカウト責任者なら佐々木は怖くていけない。2,3年出てこなくても、どうってことない、というくらい余裕があるチームと、育成に自信のあるところしか指名できないだろうね。巨人や阪神は、育成に失敗した場合に批判を受けるリスクを考えて回避すると思う。そうなると日ハム、ソフトバンク、地元の楽天の3球団に、プラスアルファ、もう1球団くらいじゃないか」と、今秋のドラフトでの佐々木の1位指名を予想している。プロ球団を悩ませるほど、無限の可能性を持つ“令和の怪物”は、今月中にも、その進路を明らかにすることになっている。